経済界を中心にスポーツを活用した地域活性化を目指す
おかやまスポーツプロモーション機構
副運営委員長 高岡 敦史氏
今回は、2018年6月に設立されたおかやまスポーツプロモーション機構(以下、SPOC機構)の副運営委員長である高岡敦史氏から、設立までの経緯やスポーツコミッションで働くやりがい、今後の展望などについてお聞きしました。
- Q,コミッションの概要や特徴を教えてください。
- SPOC機構は、2014年10月に立ち上がった「おかやまスポーツプロモーション研究会(SPOC研究会)」を母体として2018年6月に設立された地域スポーツコミッションです。SPOC研究会ではスポーツによる地域活性化をテーマとして、興味のあるメンバーが定期的に会合していたのですが、議論だけでなく具体的に実行する組織の必要性が出てきました。その後、産官学のメンバーを中心として、商工会議所の副会頭を委員長、岡山大学や岡山県体育協会などを副委員長、岡山県、岡山市、経済同友会、観光連盟、新聞社、テレビ局などを委員としてSPOC機構が設立されました。「スポーツを活用して地域を活性化する」ことを目的としているため、スポーツ団体ではなく経済界のメンバーが中心となっている点が特徴的だと思います。もちろん、岡山にも多くのトップスポーツチームがあり、実際の活動はチームとの協働が不可欠ですので、各チームには2020年に設立された「おかやまトップスポーツ協議会」を通じて機構に参画してもらっています。
- Q,現在の役職に就くまでの経歴と、コミッションで 就業する(コミッションを立ち上げる)ことになったきっかけを 教えてください。
- 筑波大学の博士課程を修了したあと、縁あって岡山大学に教員として着任することになりました。学生時代の専門は野外教育だったのですが、スポーツにも興味があり、総合型地域スポーツクラブの運営の手伝いなどもしていました。岡山で勤務して数年が経過した頃、当時の岡山大学では積極的に地域貢献・社会貢献を推奨していて、私は「まちなかキャンパス」と題した市民向けの出前講座を担当することになりました。講座では「スポーツで岡山を元気にするには」をテーマとして、ファジアーノ岡山や岡山シーガルズ、経済界、商工会議所の方々と語らう場を作ったんです。1回で終わるのは面白くないので、3回くらい立て続けに開催しました。最初は20人も入らないような会議室で実施していたのですが、どんどん参加する人が増えてきたんです。そこで、私が大学教員として出前講座をやりますと言わないと開催されない場ではなく、定期的に開催する研究会にしようとなりました。それが2014年10月です。研究会では代表を地元企業の経営者の方にお願いして、私は副代表に就任しました。その後の研究会でも初期の段階から「岡山にもスポーツコミッション作らないとね」という話はしていました。既にさいたまスポーツコミッションは設立されていましたし、視察にも行きました。研究会を重ねる中で、サッカー、バレーボールに続いてバスケットボールや卓球のチーム設立の話とか、アリーナ改革の話も出てきて、いよいよコミッションを設立したほうがいいんじゃないかと多くの人が認識し始めました。研究会は関心のある人の集まりで良かったのですが、コミッションに関してはきちんと公的なものにしないといけないと思っていたので2017年3月に研究会とは別に設立準備委員会を設置しました。委員会は10回は開催しましたね。他地域のケースの勉強や、どういう体制でどういう理念で設立するべきか議論を重ねました。そして2018年6月にSPOC機構として設立に至ります。立ち上げまでの経緯もあり、機構では副運営委員長という役職で活動しています。
- Q,コミッションにおける役割を教えてください。
- SPOC機構は「スポーツイベント誘致開催支援部会」と「スポーツまちづくり支援部会」の2部会で構成されており、私は機構全体の副委員長とスポーツまちづくり支援部会の部会長を兼任しています。メインの業務としては、スポーツまちづくりを進めていく上でコミッションが実施する様々な事業の立案、進め方の決定や関わる人のアサイン、コストの計算などプロジェクトのデザインを行っています。事業のプロジェクトディレクターのような役割ですかね。
- Q,コミッションで働く魅力ややりがいは何ですか。
- まちにとって意味あること、やるべきことを思いついたらすぐに実行に移せるところです。例えば「ファジウォーカープロジェクト」という事業があるんですが、これはファジアーノ岡山の試合時にスタジアムのまわりが渋滞してしまうという社会課題に対して、自家用車からそれ以外の手段への転換を促す取組です。当初はファジアーノ岡山と国土交通省と岡山大学の3者の連携で実施しており、かなりの効果が出ていました。ただ、こうした事業は公的な予算が切れると終わってしまうことが多いのですが、機構が受け皿となって現在も継続しています。まちにとっていい事業だったので、すぐに継続しようという判断になりました。また、岡山には4つのプロスポーツがあるのですが、岡山市がチームスタンプラリーのような取組を予算化しました。こういう事業は行政が直接実施するとどうしても無難なものになってしまうので、コミッションが受託して実施することにしました。実際には、スタンプラリーでまわるとそれぞれのチームから体験型の賞品を出してもらうことになりました。例えば岡山シーガルズやトライフープ岡山の練習に参加できる権利、ファジアーノ岡山のマスコットとのPK対決をする権利などです。これを行政が実施するとなると、練習に参加して受けてケガをしたらどうするなどの懸念から却下になることも多いと思うんですよ。機構であれば「どうしたらできるか」を最初に考えるので、この場合は承諾書に記入してもらう方法で解決しました。
- Q,コミッションで働く難しさは何ですか。
- 私たちのコミッションでは、ということになりますが、いろいろと自由に進められる裏にはきちんと合意形成取りながら進める形式をとっているので、ある程度のポジションの方を会議で集めるための調整が大変です。また、組織体制は運営委員会形式のためコミッション専従で動いている人間は一人もいません。事務局はおかやま観光コンベンション協会に置いてもらっていますが、協会の職員もコミッション専従ではありません。やりたいことのアイデアはたくさん生まれるのですが、資金と人材が少ないということが難しさですね。
- Q,今後取り組みたいことは何ですか。
- 研究会や機構でいろいろな人が集まってアイデアが生まれているのですが、みんなそれぞれメインの仕事があるわけで、ちょっと面白そうだからやってみようということはどこかが主軸にならないと動かないわけです。だから私が主軸となってもっとできるようにしたいと思っています。ただ、私の立場が大学教員のままだと民間企業の人も一緒にやろうと声をかけづらいこともあるだろうし、そもそも単価もよくわからないですよね。これを法人にしてしまえば単価も決められて発注も企業間取引で可能となります。こうした思いから、僕というリソースを岡山のスポーツまちづくりで使いやすくするために会社を興しました。これからは大学教員、コミッション副委員長、経営者それぞれの立場を活かしてどんどんアイデアを具現化していきたいですね。
“自分が主役にならなくても楽しめるマインドを持って”
現状では地域スポーツコミッション業務だけで生活しようと思わず、収入源は別に持っていたほうがいい。つまり複業で関わるイメージです。複業として自分の時間をマネジメントして当事者意識を持って関われるような人がいいですね。また、スポーツによる地域活性化、社会課題の解決は仕事のコストパフォーマンスを考える人やなるべく楽をして稼ごうとする人には向いていない。コミッションの仕事は主役にはなれないです。まわりに動いてもらわないといけないから。それでもそれを面白い、大事だって思って楽しめるマインドが必要だと思います。
- プロフィール
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おかやまスポーツプロモーション機構
副運営委員長 高岡 敦史氏
1978年 広島県広島市生まれ その後島根県松江市で幼少期から高校まで過ごす 2002年 筑波大学 体育専門学群 卒業 2009年 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 修了 2009年 岡山大学スポーツ教育センター 着任 2013年 まちなかキャンパス スタート 2014年 おかやまスポーツプロモーション研究会 立ち上げ 副代表に就任 2018年 おかやまスポーツプロモーション機構 立ち上げ 副運営委員長兼部会長に就任 2020年 合同会社Sports Drive 設立 代表社員に就任