地域資源とスポーツの融合で地域資源と経済効果を目指す

株式会社銚子スポーツタウン

代表取締役CEO 小倉和俊氏

エリア
千葉県銚子市

今回は、株式会社銚子スポーツタウンの代表取締役CEOである小倉和俊氏から、スポーツコミッションの設立経緯や、スポーツコミッションで働くやりがいや難しさ、今後の展望などについてお聞きしました。

Q,コミッションの概要と特徴を教えてください。
銚子市は、本州最東端で大きな海が見渡せる犬吠埼、東洋のドーバーと呼ばれる屏風ヶ浦、坂東太郎の異名で水量が豊富な利根川があり、自然景観に恵まれています。また、日本一の漁獲量を誇る水産業のまちであり、おいしい魚料理を楽しめるまちでもあります。銚子スポーツコミュニティー(以下、銚子SC)は、こうした地域資源を生かしたスポーツによる地域活性化を目指し、有志のサイクリング仲間により設立しました。近年、市の人口は減少が続いており、東日本大震災以降は、観光客も大きく減少していました。そこで、マラソン大会やトライアスロン大会、サイクリング大会の企画・開催することで、域外から人を呼び込み、経済効果を生むことで地域の活性化を目指しています。また、2018年には銚子市との第三セクターである株式会社銚子スポーツタウンを設立し、旧銚子西高等学校をリノベーションしたスポーツ合宿施設「銚子スポーツタウン」の管理運営をスタートしました。イベント開催や合宿誘致をすすめる他、近年では銚子特有のマリンアクティビティ「屛風ヶ浦シーカヤック」「ちょうしイルカウォッチング」とも連携し、地域内外の利用促進を図っています。
Q,現在の役職に就くまでの経歴と、コミッションで 就業する(コミッションを立ち上げる)ことになったきっかけを 教えてください。
自分は、水道会社の経営者で、スポーツ業界にいたわけでありません。2007年6月に、先輩からサイクリングに誘われました。仕事が終わってから、毎週、利根川沿いを走るうちに、仲間も2人から15人に増えました。今思えばこれがコミッションにつながるきっかけだったと思います。仲間で全国の大会に出るようになっていく中で、業界は違っても、自分を含めて経営者たちだったからか、大会に出て自分たちが使うお金と参加者の人数を考えるとすごい経済効果になることに気づきました。そして、これを銚子でもできれば、地域の活性化につながるかもしれないと思っていました。銚子は、かつては漁業や農業、醸造業が盛んでしたが、最近では、人口が減少していて、経営者仲間も危機感を感じていたところでした。2011年10月24日に読んだ新聞記事に、スポーツで観光振興を図ることが書かれており、大規模なトライアスロン大会では3億円以上の経済波及効果あると試算されていました。これで確信を持ち、商工会議所や観光協会で記事を紹介しましたが、なかなか主体となる組織ができなかったので、日本スポーツツーリズム推進機構(JSTA)のアドバイスを受け、2014年に、自転車仲間や商工会議所の方々と一緒に、NPO法人銚子スポーツコミュニティーを設立し、自分が理事長になりました。

利根川沿いを走るうちに仲間も増えました

Q,コミッションにおける役割を教えてください。
自分は、水道会社の経営者もしているので、働いている時間としてもコミッションと半々ぐらいです。役割としては、マネジメント全般で、個々の業務では、それぞれ責任者を配置していて、その方たちへの指示や調整を行っています。あとは、行政や地域の様々な組織や銀行などとの折衝があります。活動の方向性などは自分で企画したものをコミッションのメンバーと相談しながら決めています。設立以降、国の補助金をいただいていますが、そのための申請やプレゼンもしています。

デジタルやテクノロジーと融合した新しい取組を手掛ける

Q,コミッションで働く魅力ややりがいは何ですか。
銚子市は、もともと高校野球が盛んで、木樽正明さんや、篠塚和典さんをはじめプロ野球選手も多く輩出しています。コミッションの活動の中で、彼らのような郷土の英雄が、故郷を元気にするために関わってくれるようになったことは非常に喜ばしいと思っています。個人的には、彼らに会えるだけでもうれしいです。野球を中心に考えていましたが、バスケットボールの利用者も意外と多く、スポーツを通じて幅広い展開ができると思うようになっています。今は、デジタルやテクノロジーとも融合させ、超人スポーツなど新しい取組を手掛けています。国の「デジタル田園都市構想」にも採択され、補助金をいただいています。
Q,コミッションで働く難しさは何ですか。
スポーツ合宿施設の運営をしていますが、コロナ禍で、特に最近の2年間は、宿泊者からのキャンセルの連絡が連日のように届いて、大きな損失がありました。経済効果を期待している分、不測の事態での被害も痛かったです。台風の被害で施設が破損してしまうこともありました。今後は、組織の後継者を育てていくことも必要と考えていますが、なかなか難しいです。
Q,特に印象的なエピソードがあれば、教えてください。
銚子スポーツタウンができる経緯の中で、木樽さんと一緒に、地元の野球を復活させようという思いを語り合いました。廃校になっていた旧銚子西高校をスポーツ合宿施設として使えないかということで、見に行った時に「銚子商業のグラウンドより良い芝だ」と言われました。部室棟などの施設も利用可能ということで、活用に向けた企画書を書きました。多くのプロ野球選手を輩出してきた背景、銚子港の新鮮な水産物、キャベツなどの農産物を関係させていけば、地域の活性化に結び付けられると確信しました。この企画書は、市の計画や銀行の意向ともマッチし、マーケティング調査でも、高校野球のチームで「是非宿泊したい」「検討したい」という回答が多く、実現に向けて大きく前進しました。
Q,今後取り組みたいことは何ですか。
銚子スポーツタウンは、高校野球の合宿をメインとして考えていたので、学校が休みの時期に利用が限定されるビジネスモデルでしたが、テクノロジーを利用したスポーツを展開することで、平日も含めて稼働率を上げることが今の目標の一つになっています。現在は、超人スポーツの機器である「スピリット オーバーフロー」を展示していつでも体験できるようにするなど、他の地域にはないものを積極的に取り入れていきたいです。

プロ野球選手輩出の歴史と地元の農業・漁業の強みを活かし地域を活性化

今後スポーツコミッションに
関わりたい方に一言

“マーケティングが重要”

新しい取組を考える際には、自分がやりたいことも大切ですが、その地域でスポーツがビジネスで成り立つかどうか、人と人との関係についても十分に調べるマーケティングが重要と考えています。地域のためになる取組であっても、ボランティアでは長続きはしません。ビジネスとして収支が取れていることが必要です。自分は、会社経営の時から、自分だけが儲かるのではなく地域全体が活性化することが大切と親に言われていました。その考えは、特にスポーツコミッションの事業を考える時に生きていると思います。

プロフィール

株式会社銚子スポーツタウン

代表取締役CEO 小倉和俊氏

1965年 千葉県銚子市出身
1989年 日本大学卒業
1989年 習志野市内の水道工事店で働く
1991年 家業の水道工事会社を継ぐために銚子市に戻る
2007年 サイクリングにのめりこむ全国の大会へ参加
2011年 スポーツで地域の経済効果を生むことを考える
2014年 NPO法人銚子スポーツコミュニティー設立 理事長に就任
2017年 株式会社銚子スポーツタウン設立代表取締役CEO