地域への思いを軸に風光明媚な半島に地域への思いを軸にスポーツで人を呼ぶ

一般社団法人志摩市スポーツコミッション

事務局長 大山純輝氏

エリア
三重県志摩市

今回は、志摩スポーツコミッションの事務局長の大山純輝氏からスポーツコミッションの事務局長になるまでの経緯や、スポーツコミッションの活動において意識していることや働くやりがいなどについてお聞きしました。

Q,コミッションの概要と特徴を教えてください。
伊勢志摩エリアは、三重県の志摩半島南部に位置し、伊勢志摩国立公園や特徴的なリアス式海岸など風光明媚な景観が多く、海産物も豊富で昔から観光客が多く訪れるまちです。志摩スポーツコミッション( 以下、志摩SC)は、この地域特性を背景に「スポーツの力」を生かしたまちづくりを行っています。設立は2013年で、現在はスポーツイベントによる地域活性化と、サイクリングツーリズムの普及活動を主な活動としています。代表的なイベントとしては、伊勢志摩・里海トライアスロン大会があり、地元の自治会をはじめ地域の様々な団体と連携して大会運営を行っています。子供たちを含め多くのボランティアに大会運営に参加してもらっている点が特徴です。またその他にも、志摩の美しいビーチを生かした、ビーチサッカーやビーチラグビーのイベントを開催しています。
Q,現在の役職に就くまでの経歴と、コミッションで 就業する(コミッションを立ち上げる)ことになったきっかけを 教えてください。
私は志摩市出身で、家業は伊勢エビ漁をしていました。水産高校卒業後、大阪に出て建築関係の専門学校に通い設計事務所で働いていましたが、1年ほど働いた後、地元の先輩からの誘いで志摩に戻り、WEB制作会社での仕事をスタートしました。制作会社では、営業・デザイン制作・サイトの運営など幅広い業務を担当し、このようなスキル経験は現在のコミッションでの業務にも役立っています。志摩SCの仕掛け人は、前事務局長である石本でした。彼が中心となってスポーツによるまちづくりを提唱し、商工会を巻き込みながら組織を立ち上げ、民間主導のスポーツコミッションが設立されました。仕事上のつながりがあったことがきっかけで、勤務している制作会社からコミッションに出向者を出すことになり、その出向者のひとりとなったことが私とコミッションとの関わりのスタートです。当初、出向期間は1年間の予定でしたが、後任も見つからない中道半ばで去るわけにはいかず、転籍しスポーツコミッションで働くことになりました。もともとスポーツを専門でやってきたわけではなかったですが、水産高校時代、サーフィンやヨットなどのマリンスポーツに触れる機会からスポーツは好きでしたし、スポーツイベントの運営を通じ、子供たちの笑顔を見られることをやりがいに感じていました。その後、初代の事務局長の石本が、実家の家業の関係で退任することになり、立ち上げ時から共に活動してきた自分が、事務局長に就任しました。

志摩市の観光とスポーツを結び付ける

Q,コミッションにおける役割を教えてください。
数少ないメンバーで活動しているので、関わる業務は何でも行っています。イベントは実行委員会形式で開催することが多いですが、企画は、ほぼ志摩SCの事務局が担っています。前職の経験を生かして、ポスターのデザインや、HPの作成などを行うこともあります。スポーツイベントの企画の際に重視しているのは、参加者に志摩の良いところを知ってもらい、志摩のことを好きになってもらうことです。また、地域の人と関わりを持ってもらうことも重要だと感じています。スポーツを通じて志摩に足を運んでもらうことはもちろん、大会を通じてボランティアなど実際に地域の人と交流してもらうことで、大会に対しての満足度も上がり、「また、志摩に来たい」というリピーターにもつながると考えています。例えばトライアスロン大会を例に挙げると、スポーツ大会としての運営部分は、レースディレクターと審判に完全にお任せしています。その分、参加者にどうしたら喜んでもらえるか、地域によりお金を落としてもらえるか、ファンになってもらえるか、という観点でイベントを考え、地元の人と協力した「おもてなし」を実現させることが志摩SCの役割だと考えています。

志摩市を選び、この大会を選び


遠くから多くの人が来てくれること

Q,コミッションで働く魅力ややりがいは何ですか。
大会の参加者が喜んでくれることが、何よりのやりがいになっています。例えばトライアスロン大会で、ご夫婦が笑顔で一緒にゴールするシーンを見たときなどは、とても感動しました。大きなイベントの準備にはいろいろな調整や作業があり、半年以上の準備期間を要するものもありますが、全国の数ある大会の中からこの大会を選び、志摩を選び、志摩を訪れてもらうことで、すべて報われる気持ちになります。志摩を選んでくれたことに対して、最大限の恩返しをしていかなければと考えています。
Q,コミッションで働く難しさは何ですか。
イベント収入や委託事業収入などで組織を運営していますが、自分の他にわずかなスタッフをなんとか雇用できている状況です。今後、事業が上手くいかなければ倒産してしまう可能性もありますし、常に試行錯誤の中で運営を続けていくのは、正直プレッシャーを感じることもあります。設立当初は、スポーツコミッションに対する地域の理解がなかなか得られず、各種団体との調整も大変でした。現在は知名度もあがり、自治体をはじめ活動を応援してくれる団体が増えてきています。
Q,特に印象的なエピソードがあれば、教えてください。
2019年より、夏季限定で海水浴場にある海の家の運営とマリンアクティビティの提供を行っています。この事業には地元の皇学館大学の学生にも協力をしてもらいました。学生が企画した事業を行うため自らクラウドファンディングを立ち上げ一から十まで自分たちで考え、実施してくれました。新鮮なアイディアがたくさん出て、とても有望な若者たちが地元にもいることがわかりました。彼らとはいろいろな話をしましたが、将来の夢をしっかり持っていて、頼もしく感じました。
Q,今後取り組みたいことは何ですか。
志摩のような地域では、就職にあたっても業種が限られてしまいます。コロナ禍は余裕がなかったですが、いくつかのイベントが軌道に乗ってきており、スタッフを増やせるようになってきています。今後は、海の家の運営に関わってくれたような若者が、就職先としてスポーツコミッションを選んでもらえるようになるといいですね。スタッフを増やし、より活動の幅を広げていきたいです。

常に試行錯誤運営を続けていくのはプレッシャーを感じることも

今後スポーツコミッションに
関わりたい方に一言

“地域に認められる存在になることが重要。”

自分のようにスポーツの経験がなくても、地域を良くしていきたいという想いのある人に「スポーツの力を活用して何ができるか」という視点で関わってもらいたいと思います。特に重要なのは、コミュニケーションスキルでしょうか。行政担当者はもちろんですが、商工会や自治会、学校、子供たちなど幅広い関係者と良好な関係を築いていくことで、地域に認められる存在になることが、活動において重要になります。

プロフィール

一般社団法人志摩市スポーツコミッション

事務局長 大山純輝氏

1987年 三重県志摩市出身
2006年 三重県立水産高等学校卒業
2008年 大阪で建築関連の会社で働く
2010年 志摩市に戻り、WEB制作会社に勤める
2013年 志摩市スポーツコミッション設立時にスタッフとして参加
2018年 コミッションの事務局長に就任