「地域スポーツコミッション基礎研修」開催レポート
地域スポーツコミッション(以下「地域SC」)の活動に携わる初任者を対象に、地域SCに関する基本的な知識や考え方を体系的に学ぶ「地域スポーツコミッション基礎研修」が、2025年7月に全4回のオンライン形式で開催されました。
本研修は、地域SCの成り立ちや政策の背景、先進事例を通じて基礎理解を深めるとともに、参加者同士のネットワーク形成を目的として2023年から開始されています。地域SC担当者や地域おこし協力隊など、全国から36名が参加し、講義・ディスカッション・ワークショップを通じて学びと交流を深めました。


DAY1:地域スポーツコミッション概論
初回は、研修の全体像や目的を共有したのち、参加者同士の自己紹介が行われ、緊張も見られるなかで、お互いの地域や立場を知ることで、少しずつ空気がほぐれていきました。
講義では、「スポーツによるまちづくり最前線」をテーマに、スポーツツーリズムやまちづくりとの関係性など、地域SCが果たす役割の広がりについて解説がありました。
講義後に設けられた参加者同士でのディスカッションでは、自分が活動する地域の現状や課題と照らし合わせながら、地域SCの意義や可能性を考える時間となりました。


DAY2:地域スポーツコミッションの過去と現在
第2回は、地域SCの制度的背景や最新の調査データに基づいて、これまでの政策の流れや現状を学びました。
前半では、観光立国推進基本計画やスポーツ基本計画の変遷をもとに、地域SCが“量”から“質”への転換点を迎えている現状が整理されました。後半では、全国207団体を対象とした調査結果から、事務局体制、財源、実施事業の傾向などが共有され、各地の特色ある地域SCの事例が紹介されました。
参加者ディスカッションでは、地域SC担当者に必要な知識や能力等について話し合い、グループごとの発表が行われました。


DAY3:地域スポーツコミッションの先進事例研究
第3回は、先進的な2つの地域SCの取組が取り上げられました。
前半では「ウェルネスポーツ鴨川」、後半では「東北海道スポーツコミッション」の事例が紹介され、立ち上げ期の苦労や、それぞれの地域資源や課題に応じた多様な取組、組織運営の工夫が共有されました。取組の内容は異なるものの、両者に共通していたのは、スポーツツーリズムやスポーツ振興だけにとどまらず、「地域課題の解決」という目的のために、スポーツを“手段”として柔軟に活用していた点です。収益化と公共性の両立、行政との関係性、教育・福祉分野との連携など、地域SCの柔軟な事業展開の可能性を具体的にイメージする機会となりました。
講義後のディスカッションでは、「自分が属する団体で活かせそうだと感じたこと」をテーマに活発な意見交換が行われました。


DAY4:ワークショップ
最終日は、これまでの学びを踏まえて、自分が属する団体での取組を構想するワークショップを実施。デザイン思考のプロセスを活用しながら、自由な発想でアイデアを出し、自分が活動する地域に合った取組を整理しました。
グループワークでは、考えたアイデアを発表し、参加者からのフィードバックを受けながら、より良い内容へとブラッシュアップしていきました。
最後に4日間のまとめと振り返りを行い、終了となりました。
基本的な制度の理解から先進事例研究、自分が活動する地域での企画構想へとつなげる一貫した全4回の流れを通じて、参加者一人ひとりが地域SCに対する理解と関心を深めることができました。また参加者同士の対話を通じて横のつながりも広がり、充実した時間となりました。

参加者の声(参加者アンケートより一部抜粋)
「研修を通じてスポーツコミッションの活動において、型にはまらない考え方が重要であると感じた。いかに柔軟な発想ができるかという点で参考になりました。」
「地域においてネガティブに感じられていた要素をポジティブに変換すると、素敵なアイデアが浮かぶのだと実感させられました。」
「他のコミッションの方々と話をする機会があり、自団体についてこれまでとは違う視点から考えることができるようになったと感じました。」
