レポート

2025.10.28

「地域スポーツコミッション実務講座」開催レポート

2025年9月から10月にかけて、地域スポーツコミッション(以下「地域SC」)の実務に携わる方を対象とした、実践的な企画設計や戦略、仕組づくりなどの実務スキルを学ぶ「地域スポーツコミッション実務講座」が開催されました。

全3回のオンライン形式で、スポーツツーリズムの推進や合宿誘致、集客マーケティングなどを各回のテーマとし、地域SCの現場で直面する課題に対して、理論と事例紹介、実践的なワークを交えた講義を通じて理解を深めました。

第1回:スポーツツーリズムの商品造成

第1回では、スポーツツーリズム事業の企画・販売に関する基本的な考え方を整理したうえで、自地域を想定した商品造成のワークを実施しました。
前半の講義では、まず商品造成のアプローチとして「マーケットアウト」の視点や、地域資源をどのように“観光商品”へと磨き上げるかが解説されました。また、顧客の満足度をスポーツコンテンツだけではなく「総合満足度」でとらえる重要性が示されました。
次に、販売施策としてWEB戦略の有効性が紹介され、顧客に信頼感を持ってもらうための「口コミの蓄積」の重要性、そして個人をきっかけに団体集客へとつなげる導線設計など、販売戦略における具体的な手法について理解を深めました。
後半のワークでは、自地域でのインバウンド向け1日体験型スポーツツーリズム商品の造成に取り組みました。「地域資源」「コンセプト」「商品内容」「独自性」の4つの観点をもとに、具体的な商品造成を行い、参加者同士でアイデアを共有し合う中で、地域の魅力を再認識しながら、販売につながる事業づくりのヒントを探る機会となりました。

第2回:地域資源を活かしたスポーツ合宿誘致の戦略と設計

第2回では、スポーツ合宿の特性やニーズを踏まえ、自地域でのスポーツ合宿誘致を設計するための講義とワークを実施しました。
前半の講義では、スポーツ合宿市場の構造やターゲットごとのニーズについて、具体例を交えて解説がされました。さらに、誘致成功の鍵として、合宿受け入れにおける「地域の強みと顧客ニーズの整合性」や、地域とチーム、地域と地域のハブとなる「社会関係資本」の重要性が示されました。
後半のワークでは、自地域でスポーツ合宿を受け入れると想定したうえで、地域の強みや合宿地としての特性を洗い出し、それらを基にしたスポーツ合宿誘致のターゲット設定とコンセプト設計を行いました。「誰に」「何を」提案するのかを具体的に言語化し、グループごとに共有する中で、講義で得た知見を実践へと落とし込む機会となりました。

第3回:スポーツイベントの集客マーケティング基礎

第3回では、スポーツイベントの集客においても活用できる「マーケティング思考」を理解し、実務に活かすことを目的に、講義とワークを通じてマーケティングの基礎を体系的に学びました。
講義では、「マーケティングとは何か?」という基本的な問いからスタートし、目的・WHO(だれに)・WHAT(なにを)・HOW(どのように)の4つの視点から構成されるマーケティング・フレームワークについて、具体的な事例を交えながら解説が行われました。
また、各視点に応じたワークも実施され、参加者は自地域での取組や企画に照らしながら、「誰に」「何を」「どのように」届けるかを言語化する練習に取り組みました。地域の事業に置き換えて考えられるような実践的な内容となり、業務に活かせる「マーケティング思考」を身につける機会となりました。

本講座を通じて、地域SCにおける事業企画・誘致活動・集客といった実務に関する基礎的な知識と考え方を体系的に学ぶことができました。
現場の実情に即した内容をもとに、参加者自身が自地域の資源や課題と向き合う視点を持ち直す機会にもなり、今後の実践に向けた一歩となりました。


参加者の声

「スポーツツーリズム商品の造成について、失敗談も交えてご紹介いただきとても参考になりました。どうしてもプロダクトアウトになりがちなので、マーケットインでの考え方でコンテンツや内容を考えたいと思いました。」

「スポーツ合宿誘致の基本的な考え方や他の市町村のリアルな課題などを生で聞くことができ、非常に参考になりました。」

「行政職員として、マーケティング視点で考える機会が少なく、またそういう知識もこれまで持ち合わせていなかった。今回の研修会を通じて、マーケティングの考え方を学ぶことができ大変よかった。」