「地域スポーツコミッションシンポジウム2026」開催レポート
2月17日、東京都内で、スポーツ庁主催「地域スポーツコミッションシンポジウム2026」が開催されました。全国の地域スポーツコミッション(以下、地域SC)関係者や自治体職員、民間企業等が参加し、会場には約150名、オンラインでは約200名が参加しました。
本シンポジウムは、地域SCの先進事例の共有やネットワーク構築を目的に開催され、スポーツを通じた社会連携や地域活性化の可能性について議論が行われました。


主催者挨拶
開会にあたり、河合純一スポーツ庁長官よりあいさつがありました。スポーツを通じた地域振興の重要性に触れながら、地域SCが地域課題解決のハブとして果たす役割への期待が述べられました。また、本シンポジウムを契機に地域SC同士の連携や官民の協働がさらに進展することへの期待が示されました。

基調講演「スポーツ×社会連携 ~地域を豊かにするためには~」
鈴木 順 氏(株式会社モンテディオ山形 執行役員/元Jリーグ社会連携本部 本部長)
コーディネーター:利渉 敏江氏(一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構 事務局長)
基調講演は、鈴木氏による講演パートと、コーディネーターとのディスカッションパートの二部構成で行われました。
前半では、Jリーグが推進する社会連携活動「シャレン!」の理念と、クラブにおける実践例が紹介されました。
鈴木氏からはスポーツへの関わり方として従来の「する・みる・ささえる」に加え、「使う」という視点の重要性が提示されました。スポーツを目的とするのではなく、地域課題の解決に向けた手段として位置付けることが、これからの社会連携の前提であると説明されました。
特に強調されたのは、活動の「主語」をクラブから地域へと転換することです。社会連携は地域課題を中心に据え、クラブを含む三者以上が対等な立場で協働しながら価値を創出する「共創型」のモデルであると説明されました。

後半のディスカッションでは、地域SCとプロスポーツクラブの連携のあり方についても議論が行われました。クラブが持つ発信力や人を惹きつける力と、地域SCが担う地域内での調整やネットワーク機能との補完関係が示され、それぞれの強みを活かしながら地域課題に向き合うことの重要性が共有されました。
また、クラブにとっての「勝利」の位置付けについても言及がありました。競技の現場において勝利は重要である一方、経営の観点では勝利も地域との関係性を深める手段として捉えるとの考えが示されました。勝敗という不確実な要素だけに依存するのではなく、社会連携を通じて地域との信頼関係を築くことが、持続可能な経営基盤の確立につながるとの認識が共有されました。
さらに、各クラブの取組事例を踏まえ、それぞれが持つ強みや地域資源を地域課題の解決に活かすことで、社会的価値の創出と経済的持続性を両立させることが、これからのスポーツ組織に求められる役割であることが示されました。社会的価値の評価については、数値的な指標も一定の役割を果たす一方で、それ自体を目的化することへの懸念が示され、現場で生まれる変化や共感の広がりといった質的な成果を丁寧に積み重ねていくことの重要性が提示されました。
これらの議論を通じて、地域SCにおいても地域を主語に課題を的確に捉え、多様な主体をつなぐハブとしての役割を果たしていくことの重要性が改めて共有されました。スポーツを地域課題解決の手段として活用し、持続可能な仕組みへと発展させていく視点が示される内容となりました。

地域スポーツコミッション先進事例紹介
<発表者>
天草市スポーツコミッション 天草市スポーツ振興課 山下 純一氏
スポーツタウン御殿場推進協議会 御殿場市スポーツ交流課 西山 洋哉氏
一般社団法人都城市スポーツコミッション 専務理事兼事務局長 田中 芳也氏
スポーツアクティベーションひろしま 代表 秦 アンディ 英之氏
コーディネーター:藤原 直幸氏(一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構 アドバイザー)
続く先進事例紹介では、4団体の担当者に事業内容や特徴的な取組を紹介いただきました。
天草市スポーツコミッションは、新たなスポーツ施設整備を契機に設立され、地域資源を活用した大会・合宿誘致や市民の健康づくりなどに取り組んでいます。特徴的なのは、自治体内の組織でありながら戦略マネージャーとして民間人材を登用し、官民連携による事業推進体制を構築していることです。
オフィシャルパートナー制度の導入や企業連携の強化を通じて、スポーツを活用したインナー施策・アウター施策の両面を展開するだけでなく、パートナー企業との商品開発や所属アスリートの派遣事業など、多様な取組を実施しています。行政と民間それぞれの強みを生かしながら、スポーツを軸とした事業の幅を広げる実践事例が共有されました。

山下氏
スポーツタウン御殿場推進協議会は、東京2020オリンピック・パラリンピックにおける自転車競技の開催および空手イタリア代表チームのホストタウンの実績を踏まえ、大会レガシーを活かしたスポーツ交流によるまちづくりを目指して設立されました。
特徴的なのは、スポーツツーリズム、スポーツ交流、サイクルスポーツのまちづくり、空手のまちづくりといった分野ごとに部会を設け、委員が主体的に関与する体制を構築している点です。
また、スポーツイベントを継続的に開催することを目的として、地域SCが主催者となるのではなく、共催・後援・協力という立場から関わることで、取組の広がりと持続性を高める工夫も行っています。さらに、複業人材の活用により専門性や外部視点を取り入れながら、レガシーを継続的な事業へと発展させている様子が紹介されました。

西山氏
都城市スポーツコミッションは、スポーツ合宿・キャンプの増加と、国スポ・障スポ開催に向けた拠点施設整備を背景に、その管理運営や自主事業を担う実行主体として設立されました。自治体職員には定期的な異動があることを踏まえ、自治体外の一般社団法人とすることで、関係団体との継続的な関係構築を可能にしている点も特徴です。
事業は、キャンプ・大会誘致などのアウター戦略、地域スポーツの振興や競技力向上を担うインナー戦略、拠点施設の指定管理まで一体的に展開し、施設管理と事業推進を統合した組織として機能しています。
また、市の担当部局は教育委員会から観光部局を経て「スポーツ部」へと再編され、「スポーツで築く地域活力創造計画」においても同SCが地域振興の推進役として位置づけられるなど、行政内での体制が強化されています。

田中氏
スポーツアクティベーションひろしまは、「第2期広島県スポーツ推進計画」を実行する推進母体として、県庁スポーツ推進課内に設置されています。代表(事業責任者)に民間人材を登用し、行政組織の中に外部視点と実行力を組み込んでいる点が特徴です。
県内市町の取組がより戦略的に展開されるよう伴走支援を行い、スポーツを起点とした地域課題の解決を後押ししています。具体的な取組事例も紹介され、広域組織として現場と連動しながら実践を積み重ねている様子が共有されました。
また、「横断型スポーツ応援プロジェクト」を立ち上げ、県内25のトップスポーツチームと連携するなど、県全体のスポーツ資源を束ねる広域的な取組も報告されました。

秦氏
今後のスポーツ庁の取組について
最後に、スポーツ庁の廣田美香参事官(地域振興担当)が、地域SCを取り巻く現状と今後の施策方針について説明を行いました。
社会課題解決やデジタル・eスポーツの視点を取り入れた法改正の動向とともに、スポーツ基本法改正を踏まえた今後の施策方針や、令和9年度からの「第4期スポーツ基本計画」の策定準備が進められていることが共有されました。
地域SCの持続可能性については、「人材確保」と「財源確保」を中心課題と位置づけ、ミッションの明確化、戦略の立案・評価、ネットワーク構築など、組織経営の視点を持つことの重要性が強調されました。
また、令和8年度の重点支援施策としては、「スポーツによる地域活性化・まちづくり担い手育成総合支援事業」および「スポーツによる地域活性化・まちづくりコンテンツ創出等総合推進事業」が紹介されました。特に、地域SC経営多角化支援事業では、従来の自由提案型から一歩進み、「経営の安定化」「人材の育成・確保」に関する取組をモデル的に支援する方針が示されました。

地域SC交流会(名刺交換会)
プログラム終了後には、参加者同士の交流を目的とした地域SC交流会(名刺交換会)が開催されました。先進事例紹介に登壇した4名との名刺交換の場に加え、テーマごとの交流エリアが設けられ、関心のあるテーマごとに意見交換が行われました。 全国各地から集まった地域SC関係者や自治体職員、民間企業等が立場を越えて交流し、日頃の取組や課題、今後の連携の可能性について活発な対話が交わされました。




本シンポジウムでは、実践事例と政策動向の双方から、地域スポーツコミッションの役割と今後の方向性が示されました。スポーツを地域課題解決の手段として活用し、持続可能な組織運営を確立していく視点が共有される機会となりました。
